-
2026.02.07お知らせ
「葬儀まで2週間待ちと言われました。どうすればいいでしょうか…」
最近、天明寺にはこうした首都圏の方からの切実な相談事が増えています。これは一部の特殊なケースではなく、今や都市構造そのものが生み出している現象と言ってよいでしょう。
東京都心部を中心に、火葬格差が深刻化しています。
価格の高騰、そして異常なほどの待機日数。背景には公営と民営の供給バランスの崩れがありますが、実態はもはや単なる混雑問題ではありません。
火葬という本来「公共インフラ」であるはずの仕組みが、市場原理によって価格形成される構造へと変質し、**“葬式の不動産化”**とも呼べる状況が生まれています。
今回は火葬問題のリアルな実態と、その構造的背景、そしてこれからの時代に求められる**「分散型の葬式」**という考え方について解説します。
目次
- 多死社会の現実。なぜ都心で「火葬待ち」が深刻化しているのか
- まるで不動産投資? 都心の火葬料金が引き上がるカラクリ
- 東京23区を脱出する「遺体輸送」という選択
- 火葬待ちを回避。火葬・葬儀・納骨を最適化する「分散型」のメリット
- 天明寺が考える、新しい火葬・葬式モデル
多死社会の現実。なぜ都心で「火葬待ち」が深刻化しているのか

ある人口推移を分析したデータを見ると、2040年ごろまでは死亡者数が毎年増え続けるとされており、火葬需要は今後しばらく減らないことは明らかです。
中でも東京都は特殊な場所で、人口密度が極端に高く、人が密集して暮らす場所は必然的に亡くなる人の数も集中します。つまり「生」も「死」も都市に集中する構造が形成されているのです。
朝日新聞の記事『無料と9万円「こうも違うとは」 記者が実感した火葬料格差の事情』では、冬場を中心に東京都で火葬待ちが長期化している状況が報じられています。
地域によっては1週間から2週間程度、火葬まで待つケースが出ていることが紹介されていました。
火葬待ちが長くなるということは、遺体安置期間の長期化を意味します。

遺体安置料やドライアイス代は日ごとに増えていき、金銭的負担が積み重なります。さらに、長期間安置されることで家族の精神的負担も増し、「待つこと自体」が大きなストレスになります。
また、火葬場側にとっても遺体安置スペースの確保や管理体制の問題が生じ、従来と同じ運営形態では円滑な工程管理が難しくなってきています。
こうした状況を踏まえると、今後は遺体安置を目的としたホテル型施設や簡易施設など、新たなインフラ整備も現実的な選択肢になっていくでしょう。
ちなみに、遺体安置の1日あたりの料金は全国平均で1万8,970円。最も高いのは中国四国で2万7,510円、関東は1万474円と最も安い水準ですが、それでも日数が延びれば総額は確実に膨らんでいきます。
「待たされること」そのものがコスト構造になっているのが現在の火葬問題の本質です。
まるで不動産投資? 都心の火葬料金が引き上がるカラクリ

火葬問題を語る上で避けて通れないのが、火葬場の公営と民営のバランスです。
全国的に火葬場の多くは公営ですが、東京都心部では民営火葬場の依存度が高く、需要超過が常態化しています。
需要が供給を大幅に上回る市場では、価格が上昇するのは経済の理です。
都心の一等地の地価が上がるように、火葬というインフラもまた、高い投資を回収するための市場価格へと変貌しています。
実際、東京都内を中心に民営火葬場を運営する「東京博善」は、式場の増設や改装といった投資を進めながら火葬料金を引き上げています。
これは経営としては合理的な判断ですが、社会構造として見ると、火葬という公共性の高い行為が市場商品化していることを意味します。
このように、需要が過密で供給が薄い場所では価格が上がりやすいという構造は、不動産市場と極めて類似しています。
都心の地価が上がり、人が郊外へ流れるのと同じように、火葬という機能も中心部から外へと押し出されていく構造が生まれているのです。
東京23区を脱出する「遺体輸送」という選択

朝日新聞の記事『無料と9万円「こうも違うとは」 記者が実感した火葬料格差の事情』では、東京23区の火葬料が全国的に見て高水準であることが指摘されています。
都区部は、民営の火葬場が7カ所あるのに対して公営は2カ所のみです。
火葬料は公営でも割高で、
臨海斎場(港・品川・目黒・大田・世田谷の5区による共同運営)
都民44,000円/都民外88,000円瑞江葬儀所(江戸川区)
都民58,300円/都民外71,280円
となっています。一方で、多摩の「南多摩斎場」や「府中の森市民聖苑」を始めとする23区外にある公営火葬場は、住民であれば火葬料は無料です。

さらに、武蔵野市や調布市のように公営火葬場がない地域では民営施設を利用する必要があり、費用は7万円以上と割高になりますが、近隣の公営施設を使えば低額で済む場合もあります。
同様に、群馬県など都心からアクセスしやすい地域の公営火葬場も、住民外利用が可能な施設が多く存在します。
これらの施設は、都内の民営火葬場と比べて火葬費用が大幅に抑えられるケースが少なくありません。
例えば、
川口市 めぐりの森(埼玉県・公営)
組合管内居住者:10,000円
管外利用者:30,000円さいたま市 浦和斎場(公営)
組合管内居住者:7,000円
管外利用者:56,000円さいたま市 大宮聖苑(公営)
組合管内居住者:7,000円
管外利用者:56,000円いずれも東京都心からのアクセスが良く、現実的に利用しやすい距離圏にあります。
火葬待ちを回避。火葬・葬儀・納骨を最適化する「分散型」のメリット

このように、今後は亡くなった地域に縛られず、他県への輸送火葬という様式が主流になっていくことが予想されます。
そもそも、葬儀社主導で「火葬場→通夜→葬儀→納骨」までを一体化して進める従来型モデルそのものが、現代社会と合わなくなり始めているのです。
天明寺では、首都圏在住者から納骨に関する相談を受けることが増えてきました。

「都心から遺骨を移動させたい」「墓を立てたい」「永代供養を群馬で検討したい」といった相談の背景には、都内で供養すると高いという意識が定着し始めている現実があります。
場所や条件によっては、永代供養の費用が1体あたり200万円〜300万円となるケースもあります。
天明寺は1体あたり33万円ですので、その差は極めて大きいと言えるでしょう。
前橋市の火葬料金は6万3,000円、周辺の渋川市や伊勢崎市は3万円程度であり、トータルコストでも抑えられます。

このまま都心の火葬コストが上がり続ければ、遺体安置・火葬・葬儀インフラのドーナツ化現象が進行していくでしょう。
墓地が郊外に整備されてきた流れと同じ構造が、葬儀と火葬にも及び始めているのです。
例えば、
・火葬: 混雑を避け、費用の抑えられる地域で行う
・葬儀: 家族の集まりやすい場所、または縁のある寺院で行う
・納骨: 維持費を抑え、永代供養が手厚い地方の寺院を選ぶといった分散型設計は、今後ますます現実的な選択肢になっていくでしょう。
天明寺が考える、新しい火葬・葬式モデル

これからの火葬や葬式は、全てを一つの場所で完結させるものではなくなっていきます。
火葬、葬儀、納骨を分けて考え、それぞれ無理のない範囲で最適解を選ぶことは、多死社会における現実的な知恵です。
葬式は亡くなった方のためだけに行われるものではありません。
残された家族や故人を想う人々が、気持ちを整理し、日常に戻るための大切な節目です。
天明寺は群馬県にありますが、首都圏の方々にとっての「もう一つの選択肢」でありたいと考えています。
場所を分け、コストを最適化し、心を込めた供養を行う。
これからの時代に合った“お見送り”のかたちを、社会とともに考えていきたいと思います。