-
2025.10.09お知らせ
「お寺」と聞くと、地域の方々と共に長い歴史を歩んできた場所というイメージを抱く方が多いかもしれません。しかし、その裏側では多くのお寺が存続の危機に瀕しているという現実があります。これまでお寺を支えてきた「檀家制度」だけでは経営が立ち行かなくなりつつあるのです。
お寺といえども、ただ門を開けているだけで人が訪れてくれる時代は終わりました。SNSを駆使して積極的に魅力を発信して「行ってみたい」「関わってみたい」と思っていただく努力が不可欠です。
今回は、天明寺が運営するYouTube、Instagramなど各種媒体の戦略と、その裏側にある考え方を公開します。これは単なるお寺の集客術ではなく、地域に根差す全ての中小企業や個人事業主の方にも応用できる「ファン作りの戦略」です。目次
- ネット戦略の主戦場は間違いなくYouTube
- 信頼を築く「ホームページ」
- 地域性がなくなる「オンライン授与所」
- XはYouTubeへつなげる架け橋
- ありのままの言葉で共感を生むnoteの発信
- Instagramでファンとの距離を縮める
- 中小企業こそYouTubeをやるべき
- ファンを生み出すYouTubeのカラクリ
- 寺院とSNSの連携をさらに強化していく
ネット戦略の主戦場は間違いなくYouTube

天明寺のネット戦略における中核は間違いなくYouTubeです。そして、ホームページやInstagram、Xなどの他の媒体は、それぞれが独自の役割を持ちながら互いに連携しあってYouTubeを補完しています。
まずは、各媒体の役割を簡単に紹介します。
・ホームページ:信頼の礎となる「総合案内所」
・天明寺オンライン授与所:全国に縁を広げる「ECサイト」
・X(旧Twitter):情報を拡散させる「速報」
・Instagram:ファンとの絆を深める「ファンクラブ」
・note:専門性と人間性を伝える「オピニオンコラム」
・YouTube:未来のファンと出会う「エンタメ番組」
この全体像を頭に入れた上で、それぞれの具体的な役割と戦術を解説していきます。信頼を築く「ホームページ」

今の時代、ホームページを持っていないというのは、もう“お店が存在しない”のと同じようなものです。
天明寺にとってホームページは、ネット上における「本店」であり、信頼の証。初めて天明寺を知る方にとって、最初に触れる「お寺の顔」なんです。
天明寺のホームページでは、「天明寺の歴史」「年間行事」「各種ご供養の内容」「厄除けや交通安全祈願などの護摩祈祷」など、お寺の活動やサービスを一か所でわかりやすく見られるようにしています。初めてアクセスした方でも、「どんなお寺なのか」「何をお願いできるのか」「どうやって相談したらいいのか」が、すぐに理解できる構成を心がけています。
また、ページの内容は常に最新の状態に更新しています。制作会社さんと定期的に打ち合わせをして、行事の日程変更、新しい供養・祈祷の案内、建物の進捗などをその都度反映。ホームページは“生き物”のようなもので、古い情報のままでは意味がありません。
実際、天明寺の周辺では道路の拡張や新しいお店のオープンなど、環境の変化が続いています。そうした地域の動きに合わせて、アクセス情報や写真も随時アップデートし、行く前から安心できるホームページを目指しています。
そして、特に力を入れているのが「よくある質問(FAQ)」のページです。「お布施の目安はいくら?」「法要では何を準備すればいい?」「駐車場はある?」「宗派が違っても祈祷できる?」など、実際によく聞かれる質問をまとめて、住職目線でわかりやすく・丁寧に回答しています。FAQを作った理由はシンプルで、同じ質問に何度も答える時間を減らし、その分、参拝や相談にしっかり向き合う時間を増やすためです。
また、見る人にとっても、聞きたいけど聞きづらいことが事前にスッキリ解決できる安心感があります。FAQは一度作って終わりではなく、日々の質問をもとに定期的に更新しています。過去の質問と回答をデータとして積み重ねていくことで、「知りたいことがすぐに見つかる」「初めてでも安心してお願いできる」ホームページになっていくのです。
つまり、ホームページは、ただの情報発信ツールではありません。天明寺の理念や今を生きるお寺の姿勢を伝えるための大切な場所です。参拝者が安心してアクセスでき、見た人が自然と信頼できるような“デジタルの参道”として、これからも少しずつ手を入れながら、生きたホームページを育てていきたいと思っています。前橋のお寺で永代供養| 宗教法人 真言宗 豊山派 太子山 天明寺群馬県前橋市にある天明寺(太子山 神通院 天明寺)の公式サイトです。不動明王をご本尊とし、亡き方の安らぎはもちろん、今 生tenmyoji.jp
地域性がなくなる「オンライン授与所」

御札や御守、漬物などを販売する「オンライン授与所」も、今やお寺にとって欠かせない存在です。なぜなら、時代とともに“お寺=地域のもの”という考え方が薄れてきているからです。
昔は、家の近くにあったり家族がお世話になっていたりするお寺に行くのが当たり前でした。けれど今は、どんなに遠くにあっても、「このお寺に行ってみたい」「この住職の話を聞きたい」と思えば、心の距離は一瞬で縮まります。
「いやいや、お寺には直接行って供養してもらうのが当たり前でしょう?」そう思う方もいるかもしれません。
でも、体調が悪くてお参りに行けない方、家族と離れて暮らしている方、免許を返納して遠出が難しくなった方々をそのままにしてしまえば、ますますお寺とのつながりが薄れ、寺ばなれが進んでしまいます。
考えてみれば、私たちはすでに“距離の壁”を超えて暮らしています。通販で服や食べ物を買うのは当たり前。現地に行かなくても行った気分になれるし、同じ味・同じ体験を共有できる。お寺も同じです。
ホームページやYouTubeは、まさにオンライン参拝の入口なのです。そんな中、オンライン授与所を立ち上げたのは、「YouTubeを見て天明寺を知ってくださった方が、距離に関係なく“ご縁を結べる方法”をつくりたい」と思ったことがきっかけです。
ECサイトの最大の魅力は、地域という概念がなくなること。
多少の運営コストはかかりますが、全国どこからでも“天明寺の授与品”をお届けできます。さらに、YouTubeとの相性は抜群です。
「動画で御札や御守に込めた想い・ご利益を語る」→ 「概要欄からオンライン授与所へ誘導」
という流れをつくったことで、授与所のお申し込みは着実に伸び、いまでは月に数十万円の志納金をお納めいただくようになりました。
そして何より、私が発信を続けるほど天明寺を知ってくださる方が増え、そのままオンライン授与所に訪れてくださる。つまり、「発信力=信頼の広がり」であり、私にとってYouTubeもECサイトも、法話と同じ“ご縁づくりの場”なのです。
天明寺 オンライン授与所XはYouTubeへつなげる架け橋

Xの役割は、「YouTubeを見てもらうための動線設計」に尽きます。YouTube動画を公開した際の告知はもちろんですが、Xの価値はそれだけではありません。

Xは文字と画像の文化が根強いプラットフォームです。そこで私たちは、YouTubeで反響が大きかったテーマを文字と図解に変換して投稿する手法を採っています。その際、YouTubeのキャプチャを使うのではなく、X用にオリジナルの図版を作成するのがポイントです。プラットフォームに最適化されたコンテンツは、エンゲージメントが格段に高まります。
動画を見る時間はないけれどXならチェックする層にアプローチし、そこからYouTubeチャンネルへと興味を繋げる。Xは、私たちの情報をより広くより速く届けるための翼と言えるでしょう。
べんもう🪷幸せな生き方ありのままの言葉で共感を生むnoteの発信

noteは他のSNSとは少し毛色の違う、「オピニオンを発信する場」として位置付けています。ここでは、住職としての専門的な知見や社会問題に対する私自身の考えを、長文で綴っています。

例えば、「中国人による寺院売買の現実」や「お寺で起きた窃盗事件」といった、少し踏み込んだテーマの記事は多くのメディアの目に留まり、新聞社からの取材に繋がりました。また、これまで私が問題提起してきた「東京都の火葬料金の高さ」についても、最近になってようやく都が問題視し、国との議論が始まるという動きに繋がりました。
noteでの発信が社会を動かす小さなキッカケになったとすれば、これほど嬉しいことはありません。
一方で、noteは「鈴木辨望」を伝える場でもあります。以前、中学生時代の写真をアイキャッチに、仏門に入るまでの生い立ちを赤裸々に綴った記事を公開したところ、これが過去最高の「いいね」を記録しました(笑)。
【天明寺再建の秘訣】元教員志望の住職が挑む「現代のお寺経営」人々は、かしこまった完璧な姿だけを見たいのではなく、その裏側にある人間味やストーリーにこそ惹かれるのだと、改めて実感させられた出来事です。
ただし、プライベートの公開には節度が不可欠です。「バリ旅行に行きました」「高級なステーキを食べました」といった投稿は、人々の信頼を損ないかねません。あくまで法要の様子や、修行の一環として訪れた場所での出来事など、お寺の活動の延長線上にある姿を見せることが重要だと考えています。
現在、noteでの発信が発端となり新たな展開が始まろうとしています。寺院の後継者不足問題に悩む同業の住職向けに、私が培ってきた財務管理やSNS集客のノウハウを共有するコンサルティング事業の準備を進めています。noteは私の専門性を証明し、新たな事業への扉を開いてくれたのです。
鈴木辨望(すずきべんもう)@寺院再生専門家鈴木辨望(すずきべんもう)@寺院再生専門家|note133年無住の状態だった天明寺を再興。26軒だった檀家を1から集客し、現在は3000件以上。故人の家族に寄り添う法話を得意note.com
Instagramでファンとの距離を縮める
天明寺のInstagramの役割は、一言で言えば「私や天明寺との接触頻度を高め、ファンとの心理的な距離を縮めること」です。

YouTube動画が週に数本の特別番組だとすれば、Instagramは日々の様子を伝えるミニニュースや舞台裏レポートです。公式アカウントでは法要の準備風景や境内の美しい季節の移ろいなど、公式の活動を。私個人のアカウントでは、もう少し砕けた視点からの投稿を心がけています。
元々は妻が担当していたのですが、現在は専属の事務員に運営を任せています。これにより、より客観的で参拝者に近い目線での投稿が可能になりました。日々の細やかな接触が、会いに行ける住職という親近感を生み、既存のファンとの絆をより強固なものにしてくれるのです。
Instagramは、既に天明寺や私に興味を持ってくれている方が深く私たちを知り、好きになってくれるためのツール。つまり、関係深化のためのメディアと言えるでしょう。
天明寺 公式InstagramLogin • InstagramWelcome back to Instagram. Sign in to check out what your friwww.instagram.com
中小企業こそYouTubeをやるべき

YouTubeの役割は「天明寺を知らない人々と出会い、心を動かし、参拝や相談、購入具体的な行動に繋げること」です。
InstagramやXの投稿を見て「行ってみたい」と思っても、知らないお寺に足を運ぶのは心理的なハードルが高いはず。しかし、YouTubeは違います。動画を通じて、私の人柄や声のトーン、話す内容がダイレクトに伝わる。文字や写真だけでは決して伝わらない信頼感や親近感が動画には宿るのです。
そうして視聴者の中に「この住職に会ってみたい」「お寺に行きたい」という強い動機が生まれます。現に、YouTubeがきっかけで、聖地巡礼のように観光目的で遠方からお越しになる方が増え続けています。永代供養や樹木葬、遺骨の預かりに対する相談も増えつつあり、長野県や東京都など遠方からの申し込みも発生しているほどです。
つまり、YouTubeはファン獲得におけるコンバージョン率が他SNSとは比較にならないほど高い。これこそが、中小企業こそYouTubeをやるべきだと強く主張する理由です。ファンを生み出すYouTubeのカラクリ

・YouTubeで永代供養の考え方を丁寧に説明する → 共感した方がHPの問い合わせフォームから相談してくださる。
・YouTubeで新しい御札を紹介する → 視聴者がオンライン授与所で申し込みしてくださる。
・YouTubeで相談者の依頼に応じて御祈願やご供養を行う → 参拝者や相談者が増え、認知が高まる
このように、YouTubeは広告塔として新規のファンを獲得し、ホームページやECなどの具体的な受け皿へと繋ぐ最強のコンバージョンツールなのです。
天明寺では、目的別に2つのYouTubeチャンネルを運営しています。行事や仏教について真面目に解説する「天明寺公式YouTube」とエンタメ色の強いコンテンツを配信する「丸儲け住職−ブッダの教えで人生好転−」です。この「丸儲け住職」という名前、実はよくツッコまれます(笑)

名前からして多くの批判的なご意見を頂戴します。しかし、このチャンネル名は覚悟を持って名付けています。初めて聞く人はたいてい笑って、「そんな住職いるの?」と驚かれます。でも、この名前にはしっかりとした意図と覚悟があるのです。
本来の意味は、「見てくれた人が“丸儲け”になるように」という願いを込めたもの。つまり、仏様の教えを通じて、心が豊かになり、人間関係や仕事、お金の流れまでも良くなる。そんな人生の丸儲けを体験してほしいという思いです。
とはいえ、「坊主丸儲け」や「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉があるように、世間の目は厳しいものです。「お坊さんは得している」「説教くさい」というイメージをどうしても持たれがち。だからこそ、その偏見を逆手にとって笑いに変え、むしろ自分の武器にしていこうという思いで、この名前を選びました。こんな動画を出すこともあります(笑)
店に並ぶ本のタイトルが目を引くように、ネットの世界ではまず、興味を持ってもらうことが何よりも大切です。住職の話と聞いただけで「難しそう」「説法っぽい」と敬遠されがちな壁を壊すため、あえてインパクトのある名前にしました。
もちろん、名前だけが一人歩きしても意味はありません。
動画を見ていただければ、決してふざけているのではなく、仏様の教えを現代の悩みや不安に合わせて、真剣に、そしてわかりやすく届けていることが伝わると思います。笑いながらも、「あ、なるほど」「そういう考え方もあるのか」と心が軽くなる。そんな気づきの場を作ることこそ、このチャンネルの本当の目的**なんです。天明寺《てんみょうじ》群馬県前橋市にある自然に囲まれたお寺です。 正式名称は「太子山 神通院 天明寺(たいしさん じんつういん てんみょうじ)」www.youtube.com
丸儲け住職 -ブッダの教えで人生好転-「仏教の教え」を基にお金や人間関係に関する悩みをズバッと解決していくチャンネル! 人生を好転させるための方法論について解説www.youtube.com
寺院とSNSの連携をさらに強化していく

今後は、寺院とSNSの連携をさらに進化させていきたいと考えています。
最近ではLINE公式アカウントを導入し、YouTubeの視聴者に登録してもらうことで、特典として、玄関に置くだけで運気が上がる開運アイテムなど、動画の要点を一枚にまとめた資料をプレゼントしています。動画だけでは伝わりにくい内容を、図やイラストで直感的に理解できるよう工夫しました。
この特典は期間限定でXにも投稿し、拡散を図る予定です。LINEというクローズドで密なコミュニケーションツールを活用することで、ファンとのつながりをより深め、信頼関係を築いていけると感じています。
ここまで天明寺のネット戦略を紹介してきましたが、私が本当に伝えたいのは、批判を恐れず、時代に合わせて変化していく覚悟です。伝統を重んじる世界では、新しい挑戦に痛みが伴うこともあります。
しかし、守るべき本質と、変えるべき手段を見極めて行動することこそ、未来に仏教をつなぐ道だと思います。現代だからこそ使えるツールやコンテンツを活かすことで、これまでお寺や仏教に縁のなかった方々、また「よくわからない」「正しいことは何なのか」と感じていた人々にも、仏教の教えを分かりやすく伝えられるのではないかと考えています。