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2026.01.07お知らせ
昨今の葬儀業界では、お布施や僧侶派遣などの仕組みを利用して、不当に高い金額を請求する業者が増えています。
とくにインターネット集客型の葬儀社や派遣業者が増え、顔の見えない取引が一般化したことで、この傾向は年々強まっています。
「ネットで見た価格の4倍を請求された」
「お布施の7割をマージンとして取られた僧侶がいる」こうした話は決して特別な事例ではなく、私自身、葬儀の現場で数えきれないほど耳にしてきました。施主さんから直接相談を受けることもあれば、僧侶仲間から話を聞くこともあります。
悪質な派遣会社の手口から葬儀の文化を守るためには、寺院や地域の葬儀社さん、そして施主になり得る一般の方など、葬儀に関わる全員が業界の問題点を理解しておく必要があります。
これは誰かを責めるためではなく、守るために知っておくべき知識だと考えています。
天明寺の住職を務めて26年、私は日々多くの方々のご相談に向き合ってきました。その経験に基づき、現在の葬儀業界が抱える深刻な問題について解説します。
目次
- お布施はお気持ち!だから料金設定にできない
- 悪質葬儀社の中抜きに利用される「僧侶派遣」のシステム
- 7万6千円で葬儀をできるはずが200万円に…
- 葬儀文化と施主さんの想いが金儲けに利用されている
お布施はお気持ち!だから料金設定にできない

まずは、葬儀が金儲けに使われるまでにいたった背景について説明します。構造の問題から整理しないと、なぜこうなってしまったのかが見えてこないためです。
葬儀社の収益構造が厳しくなった理由は、次のような複合的な要因が影響しています。
- 祭壇・棺・生花の仕入れ値の高騰
- 会場維持・光熱費の増加
- 火葬料の大幅値上げ
- スタッフの人件費の上昇
- ネット検索による過度な価格競争
- 葬儀を小規模で済ませる風潮
コストが膨らむ中でも価格を安く見せないと仕事が取れないため、葬儀社の利益はどんどん削られていきます。
結果として、本来の葬儀費用だけでは利益が出ない構造が出来上がってしまったのです。安く見せる広告と、実際にかかる費用とのギャップがここで生まれます。

そこで一部の悪質な葬儀社は、さまざまな仕組みで儲けを図るようになりました。よく悪用されるのが、お布施の仕組みです。
お布施は本来、故人への供養の心、僧侶へ感謝の心、施主の善意・布施行為として大きな意義を持ちます。金額の大小よりも「差し出す心」が重視されてきた文化です。
しかし、葬儀社から見ると、これほど扱いやすい領域はありません。なぜなら、お布施は正式な価格が存在せず、釣りあげようと思えばいくらでも釣りあげられるからです。
しかも「相場が分からない」「僧侶に聞きづらい」という心理的なハードルがあるため、数字をいじりやすいのです。

寺院も「いくら払うべきか誰も知らない」「施主は僧侶に聞きにくい」という金額を決めない曖昧な文化につけこんで、一部の葬儀社はお布施にマージン(中抜き)を上乗せするようになりました。
例えば「お布施は10万円です」と施主に伝えるけれど、僧侶に渡すのは2万5千円で、差額の7万5千円は葬儀社の取り分というケースも実際に存在します。施主も僧侶も全体の金額構造を知らないため、こうしたことが起きてしまいます。これが「お布施の商取引化」が始まった背景です。
悪質葬儀社の中抜きに利用される「僧侶派遣」のシステム

お布施と並んで、ビジネスとして一般化しているのが僧侶派遣の仕組みです。
本来は菩提寺(ぼだいじ)がない家庭を助けるためのものでしたが、現在では葬儀社が不当にマージンを得るためのシステムとして利用される場合も存在しています。施主と僧侶が直接的な縁を結ぶことを快く思っていない葬儀社や僧侶派遣会社が存在します。
施主と僧侶側の両者が直接つながると、次回の法事から葬儀社を通さずに依頼されてしまうからです。そのため、多くの葬儀社では以下のような制限を設けています。
- 僧侶に名刺を渡させない
- 施主の住所・連絡先を教えない
- 葬儀や法事の相談は禁じる
- 寺院名を伏せ「真言宗の僧侶」など宗派だけ伝える
こうすることで本来、直接コミュニケーションをとって関係を続けていけるはずの施主と僧侶の関係がビジネスの論理によって意図的に遮断されているのです。
悪質葬儀社が僧侶に求める条件は「派遣が可能かどうか」だけです。そのため、所属や経歴が不明な僧侶、適切な作法を身につけていない僧侶が派遣されることも少なくありません。
施主から見ると、誰が来てくれた僧侶なのか分からないまま葬儀が終わる、という不自然な状態が生まれます。
7万6千円で葬儀をできるはずが200万円に…

実際に「7万6千円で葬儀を行える」という広告を見て申し込んだのに、実際の見積額は200万円まで膨らんだという檀家さんの話を聞いたことがあります。このケースでは、7万6千円に含まれていたのは、遺体の搬送費用、棺、骨壺だけでした。
しかし、それだけでは簡素だからと、多くのお花、素材のよい棺や骨壺、ドライアイス、引物、食事などの提案を受け、諸々のオプションを追加していった結果、200万円まで膨らみました。
利益を最優先する葬儀社は売上を最大化するために「これも必要ですよね?」と言って次々とオプション追加を促したり、「みなさんこちらの棺を選びますね」と高いプランに誘導したりします。
これは一つひとつを見ると無理な話ではないように見えるため、施主側も断りにくいのです。
施主さんもまた、「ちゃんと準備しないと故人に悪いから…」という理由で、次々と提案されるよいグレードのものを選んでしまいます。悲しみと責任感の中で、冷静な判断が難しくなるのは無理もありません。
葬儀文化と施主さんの想いが金儲けに利用されている

葬儀業界にはびこる悪質なネット葬儀社の手口について解説しました。地域住民と寺院が心を通わせて紡いできた葬儀の文化や「慣れない葬儀でも故人を丁寧に送り出したい」という施主さんの気持ちが、利益優先のビジネスに利用される。こうした現状を、私は住職として大きく憂いています。
後編では、実際に私が葬儀で体験した悔しい中抜きのエピソードや、悪質な葬儀社につけこまれないために施主さんにお願いしたいことをお伝えします。