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2026.03.03お知らせ
多くの方は、人生で一度は墓地を訪れたことがあると思います。
では、その墓地がどのように造成されているのか、考えたことはあるでしょうか。私は、境内にまったく墓地がない状態から墓地を造成した経験があります。
2004年、私が天明寺の住職になった当時、境内には檀信徒の墓石が一基もありませんでした。実際には、かつての住職方の墓石が崩れかけ、今にも倒れそうな状態で残っているのみでした。
墓地造成と整備、そして分譲。
これは、私が住職就任初期に取り組んだ、最も大きな事業の一つです。檀家さんも少ない。
お金もない。――そんな状況で、なぜ私は墓地造成に踏み切ったのか。
その理由と、実際に行った墓地造成・分譲のノウハウをご紹介します。
目次
- 墓地の潜在ニーズは必ず存在する
- お金がない、時間はある。だから手続きを自分でやった
- 自らポスティング。収入の大半は整備費へ
- 困難を支えるのは、大きな夢とビジョン
墓地の潜在ニーズは必ず存在する

お墓の在り方は、地域によって大きく異なります。
天明寺周辺は、自宅近くに個別のお墓を持つ「野墓地」が多い地域です。農地や田んぼの中に、墓地がぽつんと一つだけ建っている風景をご覧になったことはないでしょうか。あれが野墓地です。
つまり、たくさんのお墓が一か所に集まる霊園型だけが、お墓の形ではないのです。
私が住職になるまで、天明寺の境内には檀信徒の墓地が一切ありませんでした。しかし、地域特性から見れば、これは決して珍しいことではありません。
実際、墓地がないことで、当時ただちに不都合が生じていたわけでもありませんでした。
それでも私が墓地整備を決意したのは、潜在的なニーズは必ずあると確信したからです。

例えば――
野墓地は、既存の親族の土地であれば造成できても、新たに群馬県や前橋市へ転入してきた方が新設することは現実的に困難です。また、墓地造成には厳しい許可基準があり、保健所等の行政手続きが必要になります。これはお寺も例外ではありません。
墓地造成の際には、近隣住民の承諾書(署名・押印)を集める必要があります。それでもなお、寺院境内で供養を望む方は必ず存在する――
私はそう考えました。未知の部分への不安は当然ありました。
しかし、「墓地を求めている人は必ずいる」という確信が、私を前に進めました。お金がない、時間はある。だから手続きを自分でやった

とはいえ、墓地の造成・分譲は、思い立ってすぐにできるものではありません。
まず、墓地分譲には正式な許可取得が必要です。
区画図面の作成をはじめ、各種書類を整え、行政へ申請しなければなりません。さらに法務局での手続きなど、多岐にわたる事務作業が発生します。通常、これらは行政書士や司法書士などの専門家へ依頼するのが一般的です。
現在であれば、YouTubeなどで個人申請の方法を学ぶこともできます。しかし当時は情報も乏しく、「行政申請はプロに任せるもの」という空気が今よりはるかに強くありました。
その中で私は――
墓地造成に関わる手続きをすべて自分で行いました。なぜそんなことができたのか。
理由は単純です。
とにかく時間だけはあったから。
役所へ何度も足を運び、
修正を指摘されては直し、
また持参しては修正し……
この繰り返しで、最終的に許可取得までたどり着きました。今振り返れば、かなり無茶をしたと思います。
当時はパソコンも持っておらず、書類の大半は手書きでした。窓口では何度も、
「普通は手書きでは持ってきませんよ」
「専門家に頼むのが一般的ですよ」
と言われました。しかし――
普通でなくてもいい。
一般的でなくてもいい。
不可能でも、禁止されているわけでもない。そう考えて進めました。
修正前提で、あえて鉛筆書きのまま窓口へ持参し、その場で清書することもありました。作務衣姿で法務局や県庁へ通っていましたから、かなり珍しい坊さんに見えていたことでしょう。
多大な時間と労力はかかりましたが、結果として、素人の私自身の手で申請を完了させることができました。
これは墓地に限った話ではありません。
資金は乏しいが時間はある――そんな個人事業主の方や、独立直後の方にとって、自力申請は十分に検討価値のある選択肢だと思います。
なお余談ですが、当時担当してくださった保健所の方から、最近、天明寺のYouTubeをご覧になったとの驚きのコメントをいただきました。丁寧にご指導いただいたおかげで申請を完了できたこと、今でも深く感謝しています。

天明寺《てんみょうじ》群馬県前橋市にある自然に囲まれたお寺です。 正式名称は「太子山 神通院 天明寺(たいしさん じんつういん てんみょうじ)」www.youtube.com

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自らポスティング。収入の大半は整備費へ

さて、申請が終われば一件落着――
と言いたいところですが、実際はここからが本番です。許可が下りても、その時点ではただの空き地に過ぎません。
実際に墓石が建ち、供養が行われて、初めて墓地として機能します。当然ながら、申請直後は利用希望者ゼロ。
そこで私は、
「墓地分譲中」と手書きしたチラシを作成し、ポスティングを始めました。――もちろん、これも自分で。
さすがに住職がそのまま配ると目立ちますから、帽子をかぶって気づかれないように配布していました。

さらに、墓地そのものの整備も必要です。
- 区画を区切るブロック施工
- 通路整備
- 歩行しやすい地面づくり
これらも寺院側の重要な仕事です。
当時は、収入が入るたびに墓地整備へ投入しました。業者さんに頭を下げ、後払いにしていただいたこともあります。資金面は、正直かなり厳しい状況でした。
墓地造成とは、
- 許可取得の手間
- 整備費用
- 利用者獲得の広報
これらすべてが揃って、初めて成立する事業です。
現在は多くの方にご利用いただき、安定した運営ができていますが、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
困難を支えるのは、大きな夢とビジョン

墓地整備に取り組んでいた当時、私は本当に資金がなく、必死に生き延びる毎日でした。
しかし――
だからこそ、時間と労力を惜しまず投入できたのだと思います。そして何より、強い危機感がありました。
当時すでに、寺院運営は今後厳しくなると言われ始めていました。
誰もが危機を感じながら、具体的な一手を打てない。
そんな空気が業界に漂っていました。その中で私は思いました。
もし、廃寺寸前の天明寺を再興できたなら、
同じように悩む寺院関係者の力になれるのではないか。――言うなれば、夢見る坊さんです。
しかし、夢とやる気があったからこそ、目標に向かって動き続けることができました。
立場や業種は違っても、
一見不可能に見える挑戦でも、
明確な目標と強い意思があれば、道は必ず開けます。この体験が、これから何かに挑戦する方の参考になれば、これほど嬉しいことはありません。