Column

べんもうコラム

  • 2025.10.12

    呪いのご祈祷?

    最近、「知人に呪いのご祈祷をされたので調子が悪い」「誰かに呪いをかけられた気がする」という相談を受けました。

    お寺の住職が本当に“呪いのご祈祷”をできるのか?

    正直に言って、私はかなり懐疑的です。

    というのも、住職が誰かを不幸にするような祈祷をするなんて、まずありえません。

    たとえそういうことが“技術的にできる”としても、実際にやる僧侶はいないでしょう。

    なぜなら、悪意を込めた祈祷は必ず自分に跳ね返ってくるとわかっているからです。

    宗教の中には、他の教えを「偽物」と否定して自分たちの正しさを主張するところもありますが、

    日本仏教のスタンスは“救済”。

    苦しんでいる人をどう助けるか、心の平安をどう取り戻すかに重きを置いています。

    実際、天明寺にも「呪ってほしい」「あの人を懲らしめてほしい」という相談が来ることがあります。

    でも、そういうときに行うのは“呪いの祈祷”ではなく、“息災護摩(そくさいごま)”です。

    息災とは、すべての物事が円満に解決し、悪縁を断ち、良縁を結ぶための祈祷。

    つまり、誰かを懲らしめるためではなく、自分の中の苦しみを鎮めるためのものなんです。

    もし「どうしてもあいつを懲らしめたい!」という強い怒りを抱えている方がいたら、その怒りを落ち着かせる方向で考えます。

    怒りや憎しみを抱え続けると、それ自体が“呪い”のようになってしまうからです。

    真言宗には「調伏(ちょうぶく)」や「降伏(ごうぶく)」といった作法が確かにあります。

    歴史的には、第二次世界大戦の時に「米軍退散祈祷」が行われたとも言われております。でも、それは国家の安寧を祈る大きな祈願であって、個人的な復讐とはまったく違います。

    今の僧侶たちは、その危うさをよく理解しているので、そんな祈祷を軽々しく行うことはありません。

    結論から言えば──

    現代の僧侶が“呪いのご祈祷”を行うことはありません。

    仏教の目的は、誰かを倒すことではなく、自分の心を整えること。

    ですから、呪いのご祈祷は「しないし、やらない」。

    もし「誰かに呪われた気がする」と不安になったときは、

    まず自分の中の恐れや怒りを鎮めること。

    仏教では、心のあり方がすべてを変えると説かれています。

    だからこそ、“呪い”を解く第一歩は、自分の心を整えること。

    それが本当の意味での「息災」であり、

    運を良くする最初の一歩でもあるのです。

    ※YouTube更新しました

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