Column

べんもうコラム

  • 2025.09.21

    ホントは人間の肝(きも)がほしいんだよ

    そんなゾッとするような話から始めます。

    以前の動画でもお話しましたが、実はお稲荷さんには「二つの系統」があるんです。

    ひとつは神道系の宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)。京都・伏見稲荷を総本社とし、五穀豊穣や商売繁盛の神様で、狐は神の使いとして油揚げや稲荷寿司を供えるイメージが定着しています。

    もうひとつは仏教系の荼枳尼天(だきにてん)。インドのダーキニーが起源で、もともとは死期を6ヶ月前に予知し、人の心臓を食べる夜叉でした。やがて仏教に取り入れられ、お釈迦様の説法で善神化し、死者の肝(きも)や心臓だけを食べることを許され、密教では守護神として祀られるようになりました。日本では狐に乗る女性の姿で表されます。

    ある霊媒体質の方とお話しする機会がありました。

    「お稲荷さんに何をお供えすればいいのか」と考えていた時、目の前にキツネが現れて、顔をじっと向けたまま「ホントは肝が食べたいんだよ」と訴えかけるように感じたそうです。

    ダーキニーに由来するお稲荷さんの“本心”は、今もどこかに残っているのかもしれません。

    天部に住まう尊格は人間の欲望をよく理解しているからこそ、願いを叶えてくれると言われています。ただしそれは、普段からのお供えや感謝の積み重ねがあってこそ。願いが叶ったら「もう関係ない」と御礼すらしない人には、逆に罰を与えるとも伝えられています。

    そして、もし「肝(きも)が欲しい」という本来の欲望をかなえてしまったら、ダーキニーに悪心を呼び覚ましてしまう危険もあります。つまり、封じられていた“夜叉としての面”が蘇るということです。人間の欲とダーキニーの欲が共鳴してしまえば、それはもう願いをかなえるどころか、自分自身がその欲望に飲み込まれてしまうかもしれません。

    お稲荷さんは願いをかなえてくれる力を持つ一方で、その裏には「欲の怖さ」を私たちに教える存在でもあるのです。だからこそ、お供えにふさわしいのは「お酒」と「甘いお菓子」。特に揚げた饅頭が良いとされます。

    聖天さんや辯才天さんなどの天部尊は揚げ菓子を好むと言われますが、それは中に餡が入っているというのが“キモ”。──まさに「キモ」が大事、というわけですね。

    まとめると、お稲荷さんや天部尊には欲望を前に出すのではなく感謝の心を忘れずに、そして、現代ならドーナツやコンビニの揚げ菓子でも十分にお供えになる、ということです。

    ※月に二回の聖天浴油供では歓喜団(かんぎだん)という古代のお菓子を特別にお供えしております。

    ※YouTube更新しました

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