Column

べんもうコラム

  • 2026.03.25

    戒名は死後のものではない

    ——人生を立て直す“もう一つの名前”

    生前に戒名を授与する。

    こう聞くと、葬儀の準備をしているのではないか、戒名には意味がないのではないか、と考える方も多いでしょう。

    しかし、戒名とは単に名前を変えるものでも、死後の名前という意味でもありません。

    その前提には「受戒」という儀式があります。

    受戒とは、今までの自分の行いを見つめ直し、これからの生き方を改めていくこと。

    その誓いの証として授かるのが戒名です。

    歴史的に見ても、受戒によって戒名を自分の名前として用いていた例は少なくありません。

    武田信玄や上杉謙信など、戦国の世に生きた武将たちは、常に死と隣り合わせの中で生きていました。

    人をあやめ、自分が生き延びる。

    その現実の中で、ふと我に返ったとき、懺悔の気持ちが生まれる。

    そこから生き方を見つめ直し、戒名を持つという選択につながっていったとも言えます。

    真言宗では、僧侶は出家する際に戒名を授与されます。

    これは、これまでの行いを悔い改めるとともに、新たな道を生きるための指針となるものです。

    では、戒名を授与されたら、聖人君子のように生きなければならないのか。

    そう思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

    人は誰でも、うまくいかず、悩み、迷います。

    怒りに震えることもあれば、気持ちが整理できないこともある。

    だからこそ、戒名には意味があります。

    戒名を授与されることで、自分自身の行動を見直す機会が増えます。

    そして、苦しいときや迷ったときに、心の中で立ち返る「軸」を持つことができるのです。

    それは、神仏に誓った自分が、自分自身の言動を戒めるということでもあります。

    誰しも、人生の中で迷い、悩み、悲しみます。

    そのときに、ふと振り返るきっかけになる。

    それが戒名です。

    戒名とは――

    死後の名前ではなく、

    人生を立て直すための、もう一つの名前なのです。

    ※今日は本堂で戒名授与式を行いました。

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