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2026.07.02お知らせ
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2026年7月2日 19:13
京都仏教会が宗教法人専用のキャッシュレス決済システム「おまいりPay」を導入したことが話題になっています。
{記事リンク:さい銭やお布施にキャッシュレスなんてもってのほか! 断固反対だった京都仏教会が方針転換、「おまいりPay」を導入した理由}
さい銭やお布施にキャッシュレスなんてもってのほか! 断固反対だった京都仏教会が方針転換、「おまいりPay」を導入した理由(まいどなニュース) – Yahoo!ニュース さい銭やお布施など宗教行為へのキャッシュレス決済導入に反対していた京都仏教会(事務局・京都市上京区)が、宗教法人専用のキnews.yahoo.co.jp
これまで同会のキャッシュレス決済反対の話題を追っていた方なら、なぜ導入に踏み切ったのかと疑問を感じるのではないでしょうか?
京都仏教会は、仏教界の中でも極めて大きな影響力を持つ組織です。その決断は、京都だけの話にとどまらず、全国の寺院にも影響を及ぼす可能性があります。
今回は、キャッシュレス決済がお寺に及ぼすメリット・デメリットと、このニュースがほかの地域の寺院にどう波及しうるのかについて、群馬で寺院再生に取り組んできた現役住職の立場から、私なりの見立てをお伝えします。
目次
- 京都仏教会とはどんな組織なのか
- 「喜捨」であるお賽銭を機械で管理することの是非
- なぜ、一転してキャッシュレス導入に踏み切ったのか
- 見逃せないのは導入コストの問題
- それでも、「導入しない」のも危ういかもしれない
- キャッシュレス決済でお賽銭は増えづらい。ただし……。
- キャッシュレス決済の波は、京都以外にも広まるか
- 「管理のしやすさ」は課税に関わる
京都仏教会とはどんな組織なのか

話を進める前に、まず「京都仏教会」という組織について押さえておきたいと思います。
京都仏教会は、仏教界の中で歴史的にかなり大きな影響力を持ってきた組織です。その影響は、宗教の枠を超え、京都の街づくりそのものにまで及んでいます。
有名な事例が、景観条例への関与です。例えば、京都市ではマクドナルドの看板が赤ではなく茶色がかった色味になっています。
これは景観を守るべく定められた市の条例によるものですが、こうした規制には京都仏教会の働きかけが関与しています。
さらに、京都ホテル高層化や古都保存協力税(古都税)への反対運動も主導してきたほか、近年では、北陸新幹線延伸計画(小浜・京都ルート)について、地下水や文化財への悪影響を懸念して反対の声を上げています。
このように京都仏教会は、多くの議題で政治や法律に影響を及ぼしてきた、発言力のある組織です。そのため、今回の意思決定は京都に留まらず広い地域の寺院に影響を及ぼす可能性があります。
「喜捨」であるお賽銭を機械で管理することの是非

では、その京都仏教会は、なぜキャッシュレス決済に反対していたのでしょうか。
報道によれば、同会は「信者の個人情報などが第三者に知られ、信教の自由が損なわれる恐れがある」「民間事業者に手数料を支払うことで、将来的に課税が発生する可能性がある」といった理由から、社寺へのキャッシュレス決済導入に反対する声明を2019年に出し、2024年にも表現を改めて再び声明を出しています。
それから、現役住職である私の推測としては、お賽銭の本来の意義を損なわないためという目的もあると私は考えています。
お賽銭を納める行為は、仏教の言葉で「喜捨(きしゃ)」と呼ばれます。
見返りを求めず喜んで捨てるという意味で、手を合わせ心を込めて差し出すことに意義があります。そのため、「お賽銭を機械にかざして済ませる」ことへの違和感そのものは、私にもよく理解できます。
なぜ、一転してキャッシュレス導入に踏み切ったのか

お賽銭でのキャッシュレス決済活用に強く反対していた京都仏教会が、なぜ「おまいりPay」導入に踏み切ったのか。
報道では明確に語られていませんが、京都の寺院を取り巻く事情として「現実問題、キャッシュレス決済を導入しなければ手が回らなくなってきた」のではないかと、私は見ています。
京都の観光寺院には、毎年膨大な参拝者が訪れ、とりわけ近年は外国人観光客の参拝も急増しています。拝観料やお守りの会計に人手を割き続けるのは、現実的に限界があると考えられます。
見逃せないのは導入コストの問題

キャッシュレス決済の波が京都を越えて広がるかもしれないという状況のなか、多くの方が気になるのは、導入のメリット・デメリットではないでしょうか。
まずデメリットとしては、コストの問題です。
PayPayなどの決済サービスでは、決済手数料は1取引あたりおおむね3〜4%かかるのが一般的です。さらに契約形態によっては、手数料だけでなく、月額の契約維持費用が発生することもあります。
つまり、収入が増えないまま手数料や維持費だけがかさめば、ただでさえ経営の厳しい寺院がますます苦しい状況に陥ることも考えられます。特に後述するように、地方寺院ではこの点が重くのしかかります。
それでも、「導入しない」のも危ういかもしれない

一方で、導入しないことにもリスクがあります。
というのも、仮に今後、キャッシュレス決済に対応する場が増えていけば、キャッシュレスに対応しないことが参拝者離れにもつながりかねないからです。
これは一般の消費行動と同じ構造です。例えば飲食店でも「現金しか使えないお店はやめておこう」と判断する人がいます。同じようにお寺も「より便利なほうへ」と参拝者が流れていく可能性があるのです。
キャッシュレス決済でお賽銭は増えづらい。ただし……。

ネガティブな予測をお伝えしてきましたが、一方でキャッシュレス決済の導入は、お寺の経営にプラスの影響を与える可能性もあります。
こう聞くと「キャッシュレスを導入することでお賽銭が増えるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、実際はお賽銭そのものが大きく増えるわけではありません。
これは、すでにキャッシュレスを導入している私のお寺でも実感していることですし、導入した知人のお寺でも同じでした。
むしろ目を向けたいのは、お賽銭以外の収入面です。お守りやお札、その他の授与品・物販……こうした商品については「手元に現金がなくても、決済できるなら買おう」と動いてくれる方が増える可能性があります。
キャッシュレス決済の波は、京都以外にも広まるか

影響力の大きい京都仏教会の決断ですから、これが全国へ派生していく可能性はあります。ただ、私は意外と広がらないのではないかとも見ています。
理由は、地方と京都とでは、前提がまるで違うからです。
お寺に入る時点での拝観料を取れるのは、いわゆる観光寺院であり、その多くは京都にあります。地方の一般的なお寺は、拝観料自体をほとんど取りません。
拝観料が取れない、お賽銭も増えない、それでいて手数料は取られる——となれば、「導入してもメリットがない」と感じるお寺の方が少なくないはずです。

逆に、京都の観光寺院にとっては合理的な選択でもあります。拝観料徴収の仕組み作りには、これまで多くの寺院が苦労してきました。
窓口をどこに設けるか考え、設置し、人を配置する。外国人参拝者も増えるなか、窓口で対応する担当者にも大きな負荷がかかりつつあります。
その点、キャッシュレスなら、現金を一つひとつ受け渡しするより圧倒的に早い。
とくに言葉の通じない外国人観光客が相手で、知らずに入ってしまう人もいる中では、スムーズな決済の仕組みを整えておく利点は大きいでしょう。
「管理のしやすさ」は課税に関わる

最後に、避けて通れないのが課税との関係です。
キャッシュレス化が進むと、これまで現金で見えにくかったお金の流れが、すべて記録として残ります。これは裏を返せば、確定申告や税務調査の文脈で「管理がしやすくなる」ということでもあります。
今、高市政権のもとで宗教法人への課税が本格的に議論されています。その渦中での今回の動きは、徴税の実務がしやすくなるという側面も含めて、「どこまでを課税対象とするのか」という論点に関わってきます。
たとえば拝観料は「お布施」なのか「料金」なのか。お札やお守りは非課税でも、物販はどう扱うのか。決済が電子化されるほど、こうした線引きが改めて問われることになるでしょう。
以前の記事『お賽銭に課税しても国は儲からない。それでも私が宗教法人への課税に賛成する理由』でも触れたとおり、私はこうした透明化の流れ自体を、決して否定的には捉えていません。
{記事リンク:お賽銭に課税しても国は儲からない。それでも私が宗教法人への課税に賛成する理由}
ただ、便利さの裏側で何が動いているのかは、冷静に見ておく必要があります。私自身、引き続き動向を注視しながら、現役の住職としてお伝えできることを発信し、健全な議論につなげていきたいと思います。