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2026.08.06お知らせ
お盆は家族や親戚で集まってお墓参りに行くのは日本の夏の風景のひとつです。しかし、このような風景は今後なくなってしまうかもしれません。
実際に年間に15万件以上が墓じまいしているといったデータもあり、この数は今後も増えていくことが予想されます。
【墓じまい】年間15万件超!どの地域が多い?「無縁墳墓」の改葬も年間3400件!親族トラブルと金銭負担を防ぐ4つのステップ 一時費用と継続費用。「止めるコスト」の視点 | LIMO | くらしとお金の経済メディア墓じまいは年間15万件を超え、一般的な選択肢となっています。費用と手続きを理解し、家族で話し合うことが重要です。limo.media
また、藤沢市では自治体自らが墓じまいのガイドブックを配布するなど墓じまいを後押しする動きも増えてきています。墓じまいに関して倫理的な障壁を感じる人もいますが、むしろ無縁仏を防ぐ方が誠実であるという考えも広まっています。先祖代々のお墓を終わらせることに後ろ指をさされるようなこともないのです。
少子化などの社会の変化もあり、話題になることも増えてきている墓じまいですが、実はその背景にはさまざまな思惑がうごめいています。
「墓じまい三国志」とでも呼びたくなるような、水面下での利益争奪戦が今まさに繰り広げられています。墓じまいブームの背景にある思惑、そして墓をどうしていけばよいのでしょうか。本記事で一緒に考えていきましょう。
目次
- 墓じまいは実際、ニーズがある
- 寺院墓地と公営墓地は大きく異なる
- 墓じまいはビジネスとしても注目
- 「期限付き」という落とし穴
- 「納骨堂」ビジネスの破綻リスク
- 供養の在り方は時代と共に変化している

墓じまいは実際、ニーズがある
そもそもの大前提として墓じまいのニーズ自体は非常に高まっているのをご存じですか。実際に天明寺でも「墓じまいをしたい」といった相談は多いです。
特に普段はあまりやりとりをしていない檀家さんから突然に相談を受けるケースもよくあります。また、最近の若い夫婦の場合はお墓自体を建てない場合も珍しくありません。
終わりにしたい人は増えており、新しく作りたい人も多くはない、お墓の置かれている実情を大きく見るとこのようになるでしょう。このような動き自体は、寺院単体として見ると、経営上、非常に苦しい面があります。
理由は簡単で、墓じまいをされると檀家さんの数が減ってしまうからです。寺院運営は檀家さんがあってはじめて成り立つものです。寺院としては極力墓じまいはしてほしくないのが本音でしょう。
そのため、寺院が主体となって墓じまいを推進していくことはあまりありません。一方、自治体は墓じまいに関しては寺院よりも積極的になれます。この点に自治体と寺院の大きな違いがあります。

寺院墓地と公営墓地は大きく異なる
冒頭でも紹介したように、藤沢市では自治体が主体となって墓じまいのガイドブックを配布しています。このような動きは藤沢市に留まらず多くの自治体に波及していくことが予想されます。
なぜ自治体は墓じまいに積極的になれるのかと言うと、自治体が扱っているのは公営墓地だからです。私たちのような寺院の墓地は寺院墓地となりますが、公営墓地は都道府県や市町村が管理・運営している墓地となります。
寺院墓地と公営墓地、この違いは意外に大きなものです。公営墓地の場合は寺院とは違って、檀家となる必要がありません。
永代使用料や管理料を支払えばよく、またこのような各種費用も安価に設定されているケースが多いです。安価なことなどもあり、公営墓地は人気です。
公営墓地は埋まっていることが多く、利用したいと思っても必ずしも利用できるわけではありません。
公営墓地は空きが出たとしても募集をかければすぐに埋まる可能性は高いです。そのため墓地の放置は、とても困るのです。放置されてしまうと、空き状態を作るために時間も労力も要します。
これは公営墓地にとって、大きなマイナスです。そのため、名義人がはっきりとしている内に、墓じまいをしてもらった方がよいと考えます。このように、自治体と寺院では全くスタンスが違います。大きく見るならば、絶対に墓じまいさせたい自治体VS絶対に墓じまいさせたくない寺院という形でしょうか。
そしてさらにここに第三の勢力があります。それが民間霊園です。

墓じまいはビジネスとしても注目
民間墓地は認可を受けた上で民間企業が管理・運営に関わる墓地となります。具体的には実務や販売窓口の面で企業が大きな影響力を持ちます。以前の記事で紹介したことがある株式会社エータイなどもこの形を取ります。
墓じまいがこれだけ話題になるのは、裏を返すとそこにはビジネスチャンスが眠っているということです。そのため広告をどんどんと打って集客をします。
集客をかけた上でのお墓不要の永代供養などの管理や手間のかからない選択肢に誘導します。費用面でも抑えられているケースが多く、悩んでいる人にとっては非常に魅力的な選択肢に映ります。
実際に先ほど紹介したエータイは上場企業であり、これまでに3万件以上の永代供養の実績があります。
エータイは業界大手となりますが、大きなニーズがあるとよくわかります。その上で、民間墓地での永代供養には気をつけるべき点もあります。

「期限付き」という落とし穴
民間墓地の永代供養の場合は期限が設定されていることがあります。例えば、13回忌まで、23回忌までといった形です。はじめからそれまでの期間を見てもらえればよいと理解している場合でしたら、問題はありません。
しかし、事前の情報を持たずに広告や費用で判断する場合は、注意が必要です。もちろん、民間墓地でも契約の前にこういった重要なことは説明します。
ただ、供養はそれまでに経験のない人もおり、説明されるまで無期限で供養してもらえると思う方もいるようです。
いずれにしても、墓じまいを巡る利害関係には民間霊園も加わります。墓じまいさせたくない寺院、墓じまいさせたい自治体、そしてそこに商機を見出す民間霊園です。
「墓じまい三国志」とも言えるような、三者三様の思惑が絡み合っているのです。この中で私の考えはどうなのか?と言いますと寺院の人間ですので、三つの陣営の中では「墓じまいさせたくない寺院」に分類されることになります。最後にこの立場からの意見を添えさせていただきます。

「納骨堂」ビジネスの破綻リスク
2026年7月下旬、東京都港区にある真言宗のお寺の納骨堂が経営破綻した、というニュースが飛び込んできました。
永代供養のはずが…都心のビル型納骨堂、資金繰り悪化で差し押さえ 強制競売なら遺骨の行方はどうなる?:東京新聞デジタルお墓のマンションとも呼ばれるビル型納骨堂が都心で増えている。アクセスの良さなどから人気を集める中、東京都港区の巨大納骨堂でwww.tokyo-np.co.jp
この寺院は「真言宗大本山」を自称していましたが、本来、真言宗には「真言宗十八本山」 「十二宗派」と呼ばれる18の代表的な本山と12の主要な宗派が存在します。それぞれの本山・宗派が多くの末寺(まつじ)をまとめ、弘法大師空海の教えを連綿と受け継いできました。
一方で、真言宗には、こうした宗派や本山の組織に所属せず、「単立寺院」として運営されているお寺もあります。その中には、特定の宗派に属していないにもかかわらず、自ら「大本山」と権威ある名称を掲げるケースも見受けられます。
一般の人が「真言宗の大本山」と聞けば、長い歴史を持ち、多くの末寺を抱える由緒ある本山をイメージするでしょう。しかし、大本山と名乗っているからといって、必ずしも真言宗の既存の宗派の中で本山として位置づけられているとは限りません。
今回、破綻した港区の真言宗寺院も大本山を名乗り、1200年の歴史を前面に掲げています。実際のところはどうかというと、このお寺は以前、高野山真言宗に所属していたお寺でした。

2014年には本堂を建て替え、民間業者とともに納骨堂ビジネスを展開しましたが、わずか3年後の2017年には事業が行き詰まり、一度目の経営破綻が報じられました。その後、2018年に経営主体が移行し、2020年からは新たな体制で再出発したものの、結局は再び行き詰まることとなったのです。
派手な広告や宣伝にも力を入れ、有名人や著名人との親密さを見せることで信用を得ようとしていたようにも見えますが、経営の実態としては、なかなか思うように安定させることができなかったのでしょうね。
お寺の経営は、一般法人の経営とは当然異なります。納骨堂でご遺骨を永代にわたってお預かりし、供養していくことの担保は、信頼です。そして、その信頼は、住職や寺院が一人ひとりと心を通わせることでつながっていくものです。

権威を見せ、都心で多くの人が集い、真言宗の教えを伝え広めるために多くの人を布教し、教導しているように見えても、結局のところ、本当の意味で人に寄り添う寺院経営にはなっていなかったのでしょう。
お寺が主体となって納骨堂を経営しているように見せながら、実態としては民間業者による納骨堂ビジネスと変わらず、売上を重視し、さらに信仰心に乗じてお金を集める。
もし、そのような仕組みになっていたとすれば、そこには大きな危うさがあります。納骨堂は、普通の商品とは違います。買ったら終わりではありません。ご遺骨を預けた人は、10年後、30年後、50年後……そして100年後もお寺が存続し、供養が続けられることを前提にしています。
「永代供養します」の言葉は、それだけ重い約束なのです。だからこそ、納骨堂は売れればいいというビジネスではありません。
売上を伸ばすことよりも、その先にある供養をどう守り続けるのか。住職が代わっても、運営する人が代わっても、お寺として責任を持ち続けることができるのか。そこまで考えて初めて、お寺が納骨堂を運営する意味があるのだと思います。宗教法人という信用。
大本山の権威や永代供養の安心感を前面に出しながら、実態として売上を追い続けなければ維持できない事業になってしまえば、一般の民間企業が行う納骨堂ビジネスと何が違うのでしょうか。今回の破綻劇は、現代の納骨堂ビジネスが抱える深い闇を浮き彫りにしたといえるでしょう。

供養の在り方は時代と共に変化している
私は、社会の変化に合わせ、お寺も供養の形を変えていくべきだと考えます。
例えば、天明寺は遺骨を1年間1万円で預かっており、現在は200体を超えるご遺骨を預かっています。お墓を持たない方でも供養をすることができ、また個別の法要などの相談にも乗っております。
なお天明寺で遺骨をお預かりしている方の中でも民間墓地に変更することを相談される方も少なくありません。
もちろんそれぞれの要望に沿った形を選ぶことが最善です。その上で私は民間企業の広告力や人の心に入ることの上手さに驚かされます。
墓じまいについてこれだけの選択肢が提示され、実際に、その中で選択を検討する人もいます。これは多くの方が意識的にせよ無意識的にせよ供養について真剣に考えているからこそです。
社会が変化していく中で、むしろ変化の中だからこそ、供養の在り方についての関心が高まっています。そんな時代に「墓じまいさせたくないお寺」ではネガティブな印象を持ってしまう人も少なからずいるでしょう。
もちろん、檀家さんあってのお寺ではありますが、その点に固執しすぎることは危険です。
お寺の住職としても墓を巡る関心の高まりにしっかりと応えられるように、求められていること、できることを日々考えていくことは非常に重要であると考えます。