ベンモウについて

鈴木辨望紹介

133年無住の天明寺に入る
鈴木 辨望(すずき べんもう)
真言宗豊山派天明寺住職

大正大学文学部を卒業、同大学院修士課程修了。文学修士を取得。
真言宗豊山派総本山長谷寺研修所を終了後、天明寺の住職に専住する。

天明寺の住職として

平成11年、師僧の兼務していた天明寺の住職になる。
平成16年天明寺の住職に専住する。護摩堂、庫裏客殿、聖天堂を建立。永代供養墓や遺骨預かり、樹木自然葬など、現代のニーズに合った寺院運営を心掛けている。
地域産業の発展を祈り、壇信徒問わず集まることが出来る寺院としてその一翼を担っている。

入寺当初の檀家数は26件

平成16年入寺当初檀信徒数は26件、境内に墓地はなく、境内地500坪の苔むした状態であった。
寺有金や資産もなく、収益事業も営むこともないまま、住職として寺を維持していくことは非常に困難であった。

様々な経営方針を模索

寺院運営から得られる収入に限界を感じる中、副業やアルバイトをして何とか自分の生活費だけを維持しようと考えていた。
しかし、無住職の状態であった天明寺の住職に就任した後、寺院運営以外での収入を得るということは天明寺だけでは運営が立ち行かなることを認めることに過ぎず、何とか寺院の再生を計ることで天明寺を運営していく中で収益を上げなければならないと考え、様々な経営方針を模索しながら、復興を目指した。

今では檀信徒数3000件超え

平成16年当初26件ほどだった檀信徒の数は令和4年には3000件を超えた。
寺院の衰退が進み、全国に75000寺のおよそ4割の寺院の運営が立ち行かない現代において天明寺住職として経営をしてきたことで何とか維持することが出来ている。

日本文化の中心を担う寺院の役割

今後、更なる寺離れ、宗教離れが加速していくとされる現代において、寺院が消滅、廃寺していく現状を憂慮しつつも、日本人の文化の中心を担ってきた寺院に求められる役割を見つめ直すことで、大乗仏教の思想である皆がすべて平等に幸せになれる、平等に掬われるためには寺院の存在は欠かすことは出来ない、と考えている。
天明寺の再生を図りながら、苦慮するお寺の運営をマネジメントすることで私が上げていた実績を元に運営、経営のノウハウを提供し、一緒に再生していくことを目指していきたいと考えている。

決意

お寺の住職とはお経を読み、作法を行い、法務に携わる事だけをしていればよいというのはもはや幻想に過ぎない。
寺院は先ゆく将来まで維持ができるように運営をしていかねばならない。
しっかりとした経営をしていくためにはお坊さんとしての立場とは切り離した経営者としての体制が必要である。
お寺の住職としてお金に無頓着であれば、寺院経営は成り立たない。
住職が経営をしっかり学ばなければ、寺院の歴史的価値や文化的価値を残したまま廃寺になることもありえるのだ。

副業して住職の生活費を賄うことができるのはその一時だけである。寺院から得られる収入を産み出し、支出を限りなく抑えるためにはもっと自分自身が携わる寺院のメリットを知り、デメリットを改善することにある。

寺で食えないから他に働きに行くのであれば、寺はすたれる。寺で食えないからではなく食えるようにするために何をすべきか、真摯に寺院運営に向き合うことが大切である。
明治期に廃仏毀釈を経験したことで寺を捨て神官になろうとしてしていた者もあったと聞く。日本仏教寺院が数々の試練を乗り越えながらも維持をすることができているのは人々の心のよりどころとしての役割があったからである。
精神的安らぎは人類には欠かすことが出来ない宗教観である。
我々の心の根に潜む悩みや苦しみは取り除くことは出来ない。
そのために必要なのは人々が悩みや苦しみを打ち明けられ、少しでも心が穏やかになれるような寺院空間、宗教者としての立場である。 宗教者としての立場を失わず、寺院の経営者としてその時々の文化の流入や人々の心の流動を考慮しつつ、千年続くお寺の運営を目指していきたい。